生活クラブでは、山形県庄内地方で暮らす選択肢をも視野に入れた「庄内の福祉コミュニティ構想」を進めています。酒田市の五十嵐康達さん(地域創生部地域共生課)を迎え、酒田市の暮らし、仕事や住まいについて聞きました。
五十嵐康達さん
「参加する暮らし」を目指して
庄内平野に位置する酒田市は、自然が豊かで美味しい食べ物も豊富ですが、現在約10万人の人口は減少しつつあります。そこで酒田市は、「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を立て、さまざまな施策を推進しています。
生活クラブと連携した地域づくりの取り組みも、そのひとつです。生活クラブの組合員にとって「食の故郷」と言われる庄内地方では、長年にわたる生産者の方々との交流活動を通して強いつながりが築かれており、そのつながりを踏まえ、持続可能な地域づくりを進めながら酒田市で豊かに暮らすことの可能性を模索・提案しています。
これまで生活クラブと酒田市は、アンケートの実施、チラシ配布、個別相談会の開催などを通して、組合員の声と知恵を活かす方法を探ってきました。その結果、一人ひとりが役割をもって関わることで地域の課題を解決し、豊かな暮らしを目指していく「参加する暮らしに集うまち」というコンセプトの基本計画を酒田市は策定しました。
その拠点と住まいの整備、酒田市での活動企画、コーディネートをする人・機能・場の整備、そして移住と生きがいづくりのサポートを協働して進めていく計画です。
酒田市の医療・介護の状況
酒田市の医療体制を高く評価を受けており、その理由は3つあります。
1つ目は、かつての県立病院と市立病院が合併し、それぞれが「高度急性期・高度救急救命」と「回復・療養期」という役割を担う体制ができていること。2つ目は、合併してできた山形県・酒田市病院機構とその他の民間病院と市内の「かかりつけ医」との連携の仕組みがきちんとできていることです。3つ目は、在宅医療・介護と医療の役割分担と連携の仕組みが構築されており、医療情報を統括する『ちょうかいネット』を通じて、本人の同意があれば病院も介護事業者も情報を共有することができていることです。
介護施設は介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)は8施設定員641人。人口10万人規模の都市としては、比較的多いと言えます。その他に、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、ケアハウスなどの選択肢もあります。また、元気なうちからのシニア向けの住まいを提供している事業者もいます。
在宅介護の状況としては、デイサービスの事業所がたくさんあるのが特徴です。地域包括支援センターが市内に10ケ所あり、酒田市では市独自で専任のコーディネーターを配置し、地域ぐるみの介護予防の取組みや居場所づくり、生活支援の整備を進めてきました。
「民生委員さんと自治会が協力して介護予防体操の会を企画運営するなど、介護予防事業の補助金も活発に活用されていて、地域のしっかりとしたケア体制の基礎がつくられています」と五十嵐さんは言います。
酒田市の仕事・住まいの状況
仕事に関しては、酒田市の有効求人倍率は1.54%で、仕事は十分にあると言えます。ただ、希望する仕事が見つかるかどうか、首都圏と比べて給与が低いなど、なかなか難しい状況ではあります。
酒田市の就職支援として、『酒田市UIJターン人材バンク』の支援があります。メールアドレスを登録すれば求人情報を月2回配信するほか、「求職登録」をした人には専門のコーディネーターが職歴や希望を配慮してマッチング支援をしています。シニア向けには『酒田市シニア雇用創造協議会』のマッチングの取り組みもあります。フルに働くことを求めていない方、学歴・年齢にかかわらず仕事をしたい方の相談窓口です。
五十嵐さんは、ほかにも仕事の可能性は広がるだろうと予測しています。「生活クラブの生産者のところで仕事があるとも言われています。また、『好き』を『小さな仕事』に育てる『鶴岡ナリワイプロジェクト』のような活動も広がりつつあります。生活クラブとともに地域の課題解決をワーカーズコレクティブで事業にする可能性もあると思います。酒田市で一緒に新しい働き方をつくっていけたらいいですね」。
住まいに関しては、『酒田市空き家等情報サイト』を酒田市が運営していて、「借りたい」「買いたい」「お役立ち情報」「相談先一覧」の情報を提供しています。ただし、ちょうどいい「空き家」はなかなか見つからないのが現状です。一方不動産情報誌などで、貸し家、売り戸建て、売り土地、売りマンションの情報を得ることは容易です。
「地区や家のイメージを伝えていただければ、地元と連携をして家探しのお手伝いもできます」と五十嵐さんは言います。
酒田市の学びと暮らし
酒田市には、東北公益文科大学があります。地域に開かれた大学で、出張講座、聴講生の受け入れ、協創コーディネーター養成講座などもあります。学んだり活動したりする場は、大学以外にもたくさんあります。「参加する暮らしに集うまち」の拠点ができれば、さらに活躍の場が広がっていくことでしょう。
まずは、実際に一度行ってみるのがよさそうです。お試し住宅もあり、7泊8日まで無料で利用できます。
「みなさんが気にされる気候ですが、冬はやはり寒いです。風が強くて吹雪になる日もあります。ただし、毎日雪かきをしなくてはならないような積雪量ではないです。冬も一度は体験してみてください。『百聞は一見にしかず』です」と五十嵐さん。
2020年1月には体験プログラムを企画しています。興味のある方は、ぜひご参加を!
参加者方の感想です。
・一度行ってみたいと思います。
・やはり一度現地を見学したいです。
・医療についてよく知ることができました。イギリスやドイツのかかりつけ医制度が酒田市にあるという印象を持ちました。
・介護環境についてお話をうかがって勉強になりました。
・一度、酒田を見てみたいです。地域の組合員にも酒田の移住について話します。
・鳥海山を含む自然の豊かさ、お話を聞いていると桃源郷のように思えてきました。