第6回 庄内で暮らすを検討する会 「バスは 1 ⽇に 4 本で、知っているのは夫だけ…不便から始まった⽣活が、オール電化で季節を楽しむ余裕もできた」

生活クラブでは、「食の故郷」である山形県庄内地方で暮らす選択肢を視野に入れた「庄内の福祉コミュニティ構想」を進めています。

2019年12月14日には、東京から酒田市に移住された山脇文子さん(「庄内で暮らそう!移住者交流会」副会長)をお招きし、ご自身の移住体験について聞かせていただきました。聞き手は、酒田市役所地域共生課の五十嵐康達さんです。(敬称略)

 

 山脇文子さん(「庄内で暮らそう!移住者交流会」副会長)

 

酒田市役所地域共生課の五十嵐康達さん

目次

酒田で知った地域のつながりや「暮らし」の味わい

 

酒田市を含む庄内地方は、生活クラブの豚肉や米などの主要な消費材の生産者の地元です。生産者の方との45年に及ぶ提携の歴史がつむがれてきました。消費材の提供と購入という関係にとどまらず、これまで延べ1万人を超える組合員が庄内・酒田を訪れ、産地交流も活発に行われてきました。

少子高齢化が進むなか、酒田市は2015年から地方創生の取り組みとして、「新しい人の流れをつくる」を目標に掲げました。そして他地域からの移住・定住に向けて総合的な対策を進め、若者をはじめ元気な高齢者の移住促進にも力を入れています。
一方、生活クラブでは、長年組合員としてかかわってきた人たちも含め、セカンドライフにおける「Care」を考慮した「FEC」(Food・Energy・Care)の持続可能な暮らし方の模索も始まりました。
このような双方の課題をクロスオーバーさせて始まった協働の試みが「庄内の福祉コミュニティ構想」です。そして組合員とともにセミナーや勉強会を重ねて生まれたコンセプトが、「参加する暮らしに集うまち」です。

参加型の「拠点づくり」が動き出した!

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五十嵐:酒田に移住したきっかけは?

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山脇:以前に半年ほど庄内に勤務して美しい田園風景に魅せられていた夫が酒田に転勤になりました。私は東京生まれ東京育ちで、区役所に勤めていました。しかし、夫が「他に転勤になったとしても、いずれは酒田に戻りたい」と言うほどになり、人生80年と考えれば半分を東京で暮らしたのだから移住してもいいと結論し、5年前に退職して酒田で暮らすことにしました。

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五十嵐:当初、困ったことはありましたか?

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山脇:車をすぐに買わなかったので、移動に困りました。5〜10分ごとに電車やバスが通る東京とは大違いで、電車は1時間に1本、バスは1日に4本…。3月に引っ越し、酒田ではまだ吹雪くこともあり、バスを逃したときは寒さが身にこたえました。

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五十嵐:最初は、知っている人が全くいませんでしたね?

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山脇:知っているのは夫だけ。4月から市役所の臨時職員の採用が決まってはいたのですが、3月中は家にこもっていました。電気カーペットの上で布団にくるまってテレビを見ていたら、寂しくて涙がツーっと流れました。そこで、スーパーに買い物に行って地元の食材の調理方法を店の人に聞いたり、用がなくても隣の家に寄っておばあちゃんの話を聞いたりするようにしました。

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五十嵐:知り合いを増やしていったんですね。

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山脇:4月からは職場でも知り合いができましたが、決定的だったのは市の公報に出ていた移住者交流会の「芋煮会」。Uターン、Iターン、Jターンの人たちがたくさん参加していて、世代の違う多様な人たちと仲良くなれました。今は移住者交流会の副会長です。

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五十嵐:地域でどんな活動に参加していますか?

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山脇:町内会の草むしりや公園の清掃などです。用水の泥かきに出たときは、「女は初めてだ」とびっくりされました(笑)。東京では、「他人との接触=トラブル」とすら思っていて、表札は出さず、電話も勧誘が多いから出ないなど、他人との関わりを極力避けていました。ここに来て、一人で暮らしていけないから近所の人たちと協力するのが大切だと実感するようになりました。

酒田の生活費から自然の風物詩まで

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五十嵐:冬の寒さはどんな印象ですか?

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山脇:冬はずっと曇っていて、当初は辛かったです。でも、2年目からは平気になりました。今となっては、むしろ東京のからっ風の方が寒く感じるほどです。玄関先の雪かきも慣れれば体が温まるいい運動ですし、成果が見えるだけにやりがいもあります。中間山間地の一人暮らしの高齢者のお宅での雪かきボランティアの活動に毎年参加していて、雪かきの技術もそこで教わって向上したと思います。

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五十嵐:冬の暖房費なども含めて、生活費に関してはどうでしょう?

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山脇:物価はおおむね都内より安いです。スーパーでも白菜やキャベツなどは丸ごと売っていて、お手頃価格です。車があれば産直の売店に行くのもお勧めです。生のキクラゲや真っ赤なネギなどの地元野菜に感動しました。食材はほんとうに豊かです。最低賃金が安いのですが、東京に住んでいたときのように物欲にかられて無駄遣いすることがなくなりました。今では太陽光発電のオール電化の自宅を建てたので、暖房費は一週間に灯油4缶使っていた移住当初とは比較にならないほどかかりません。

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五十嵐:土地の坪単価が10〜20万円程度と家は建てやすいので、太陽光発電システムを付けて新築するという選択肢もありますね。

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山脇:地元の大工さんが太陽光発電を勧めてくれて、補助金の申請などもしてくれました。雪が降ってしまうと無理ですが、冬の薄曇り程度でも発電します。冬の寒さは住まいによって全く変わります。今は、1階は2台のエアコンとリビングにホットカーペット、2階はエアコンなしで過ごせます。

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五十嵐:最後に、移住してきて特によかったと思うことを聞かせてください。

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山脇:自然が身近に感じられることですね。冬は朝、出勤時に白鳥が田んぼにやってくるのを眺め、帰路には最上川に帰っていくのを見送ります。3月になって白鳥の群れがV字を描いて飛んで行ってしまうのは寂しいですが、それが春の訪れです。そんな季節の風物詩を日々楽しめるのが酒田の魅力だと心から思います。

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五十嵐:限られた時間でしたが、移住体験者から生のお話が聞けて、参加者のみなさんにとてもよい参考になったと思います。どうもありがとうございました。


参加者の感想

・実際に住んでいる山脇さんの話が聞けてよかった。よい点ばかりだったので、本当は何か困ることないかと思ってしまいました。
・移住した方の話はやはり現実的で、よくわかりました。とても参考になりました。
・生活全般のことがきけてよかったと思います。
・生の声はやはり説得力がありますね。できればもう少し年齢の高い方の話も聞いてみたいです。

 

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