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報告レポート

第25回 老い支度を考える―ゆるやかな連絡会 「ライフコースの視点から考える『老い』」開催報告

「老い支度」に関心のある人々が集い、学び、話し合う場『老い支度を考える-ゆるやかな連絡会』では、さまざまなテーマで勉強会やセミナーを開催しています。

2019年11月11日には、東北公益文科大学准教授の鎌田剛さんを講師に迎え、「ライフコース」の視点で考えるセカンドライフと、高齢期の「参加する暮らし」についてのお話を聞きました。

 

 


 

それぞれの世代には、特徴的な傾向がある

 

「ライフコース」とは、同じ世代に見られる暮らし方の傾向と、生涯パターンのことです。同じ世代の人たちは、流行の歌、話題になったニュース、流行りのブランドなど、世の中のさまざまな出来事や価値観を共有しています。

 

1950年前後生まれの女性たちは、高度経済成長の時代に育ち、暮らしはどんどん便利で豊かになった世代です。学校終了後に就職し、20代前半で結婚して寿退社し、専業主婦になり、世の中を動かしてきた男性を支え、旅行やガーデニングやアート鑑賞など充実した趣味の世界も広げてきた。そんな「ライフコース」をたどって来たと考えられます。映画なら、『風と共に去りぬ』、『ローマの休日』、『サウンド・オブ・ミュージック』などに触発され、若い頃から、ハワイ、ヨーロッパなど海外に旅行できるようになった世代でもあります。俯瞰してみれば、戦後の貧しい時代を生きた前の世代よりも豊かな世代と言えます。そして統計を見ると、60歳以上になっても暮らし向きが比較的良い世代でもあることが見てとれます。

 

「60歳以上の方の暮らし向き」令和元年度版高齢社会白書より

 

退職後の暮らしが長くなった

 

およそ100年前の1920(大正9)年と比べると、今は退職後の年月が非常に長くなっています。当時は、60歳で退職して1.5年くらいで寿命を迎えるのが平均的だったのですが、現在は65歳で退職してから15~30年生きるのが当たり前です。

 

厚生労働省『平成24年版 厚生労働白書』より

 

現代は、老後の長い時間をいかに生きるかが、社会的にも大きな課題です。
かつては、定年後の男性が「老害」と呼ばれたり、「無理しないで休んでいて」と家族からスポイルされ、心身機能の低下とともに社会との関わりを減らしていきました。

 

しかし、今は「サクセスフル・エイジング」という考えが生まれ、高齢期に至っても新しい役割や機会があると捉えられるようになってきました。一方的に「支援を受ける側」になるのではなく、主体的に暮らしを充実させる生き方は「プロダクティブ・エイジング」と呼ばれます。趣味や余暇活動だけでなく、週3回仕事をする、自治会長を務める、地域のボランティア活動に参加する、家族のために週1回夕食を担当するなど、可能な範囲で役割を積極的に果たしながら、生涯にわたって成長しつづけるのが「プロダクティブ・エイジング」です。

 

社会的な活動が、地域のつながりを生む

 

「社会的な活動をしていて良かったこと」の質問に、過半数の人が「地域に安心して生活するためのつながりができた」と答えています。ほかにも「新しい友人を得ることができた」、「社会に貢献していることで充実感が得られている」、「健康維持や身だしなみにより留意するようになった」などと答える人も多く見られます。高齢期に社会的な活動に関わることが大切です。

 

厚生労働省「平成29年版 高齢社会白書」より

 

『友だちの数で寿命はきまる』(石川嘉樹著・マガジンハウス)の中に、寿命に影響を与える1番の要因が「『つながり』がある」ことだいうホルト・ランスタッドの研究結果が紹介されています。「タバコを吸わない」や「お酒を飲みすぎない」よりも大きく影響しているのです。

 

寿命に影響を与える要因(石川善樹(2014)『友だちの数で寿命はきまる』, マガジンハウス(Holt-Lunstad J, Smith TB, Layton JB(2010)PloS Med. 7:7e1000316よりの作図))

 

友だちがいれば、外に出かける。すると、運動にもなる。ストレス解消の手段が増えたり、自尊心が高まる機会ができたり、脳の刺激で思考がポジティブになったりする。結果、健康になる。とても単純で簡単なことに思えますが、社会貢献活動に関する調査などを見ると、何もしない高齢者が全体の70%弱と多いのは現状です。

 

「参加する暮らし」のヒント

 

かつて暮らしは画一的に制度化されていました。例えば、結婚するのが当然で、離婚はNG、「愛情で結ばれた両親と子ども」や「一太郎二姫」が家族の理想とされていました。でも今は、結婚も離婚も各自の選択で、家族についても単親(未婚・離婚)、ステップ・ファミリー(子連れ再婚家族)、同性カップル+養子、パラサイト・シングルなどさまざまな形があります。暮らしが個人化・多様化する今、高齢期の暮らしにもさまざまな新しい形が生まれています。

 

実例を紹介します。
山形県酒田市の『いぶきの家』は、近隣の農家のおばあちゃんたちが4~5人でやっているお店です。毎日の食事を作ってきた経験を活かして、地元名物の「冷たい肉そば」や「鍋焼きうどん」を提供しています。地域の人のみならず、営業回りの会社員、週末にはネットの口コミを見て来るライダーなどで賑わっています。ワンコインに満たないプチ収入でも、地域の経済活動に参加することでモチベーションが湧くのに加え、「美味しかったよ」「またお母さんに会いにくるね」とお客さんから声をかけられることが生きがい・働きがいにもなっています。

 

 

島根県邑智郡美郷町の『まほろが産直市』は、自治会と婦人会などの有志が集まって「道の駅」を拠点として産直、売店、カフェを事業とする会社を住民出資金を元手に設立しています。シェフは地域おこし協力隊、店番は近所のおじいさん、週末は婦人会による「女将さん食堂」が開かれます。社会福祉協議会の配食サービスの中継拠点も兼ね、中高年ボランティアが宅配を担当しています。異なる属性の人たちが、それぞれの得意を持ち寄って参加することで、地域の課題を解決する大きな力が生まれています。

 

 

私は、「プロダクティブ・エイジング」を意訳して「参加する暮らし」と表現しています。消費や利用するだけの暮らしを超えて、自ら何かをつくり出す「参加する暮らし」を軸に、セカンドライフの月日とお金や労力の使い方を考えていくことが大切だと思います。ぜひ、みなさんも一緒にやりましょう!

 


参加者の感想
・これまでの生き方がこれからの暮らし方に当然だけれど影響を与えることを再確認。
・プロダクティブ・エイジングについて知ることができて良かった。
・「参加する暮らし」の具体例が興味深かった。健康なうちは、社会参加していたいと思う。どのように仲間作りをするかが課題(移住した場合)。
・老いの現実をふまえ、参加してつくり出す必要性を知った。
・自分のライフステージの立ち位置をあまり自覚していなかったが、まさにどんぴしゃりの内容だった。
・いつまでも自分らしく前向きに生きていきたいと思った。