生活クラブらしさ満載の参加型福祉コミュニティーづくり

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特派員レポート

誰もが生涯輝けるまちづくりをめざして

 

美味しい庄内米、平田牧場のお肉…生活クラブの組合員にとって酒田は胃袋をつかまれている身近な存在。第2の故郷になるかもしれない酒田市と生活クラブの新たなまちづくり構想はどんなものなのか。私はその秘密を探るべく、今回の酒田体感プログラムに参加してきました。

庄内空港へは羽田からたった1時間、機内で眠る時間もなくあっという間に到着。「おいしい庄内空港へようこそ」という空港のキャッチフレーズが私たちを歓迎してくれます。預けていたスーツケースと一緒に回るメロンに庄内の緩やかな空気感が表れているようで、旅に期待が膨らみます。

 

酒田市とFEC自給ネットワーク

 

 

酒田市に到着し、まずは「交流ひろば」にて今回のプログラム参加者、関係者と顔合わせとなりました。

まずこのプロジェクトの背景をお聞きすると「当時は子どもや家族のために安心安全な食材を求めていた組合員も、今はシニア世代となり、食だけでなく老い支度についても考え始めている」といったニーズがあるとのこと。…これってまさに私のこと?! 実際に私も二人の子どもが成人し、なんとなく胸の中に抱えている虚しさのようなものを感じるようになりました。

何か新しい出会いを求めていたからこそ、今回の庄内暮らしプロジェクトのチラシが目に飛び込んできたのかもしれません。

 

 

そんなこのプロジェクトの柱となる取り組みがFEC自給ネットワーク構想。食料(Food),エネルギー(Energy)福祉(Care)の頭文字をとり、「共生」というキーワードで進む、生活クラブが酒田市と一緒に取り組む構想です。この取り組みでは都市への人口集中に対抗する地方のまちづくりを目指しているそうです。

 

実際2018年には、食料を軸に新たな雇用を生み出す事業を起こし、地域の中でお金が循環する仕組みをつくる第一歩として、生活クラブで扱う消費材の生産、供給、運搬にかかわる働き手とその家族が加入する「生活協同組合 庄内親生会」を設立。それによりこれまで生活クラブの消費材に関わりながらも互いに繋がっていなかった庄内地方の生産・関係者に横のつながりが生まれ、お互いの生産物の新たな消費者にもなったとのこと。数年後には一般家庭にも加入できる仕組みが検討されているのだとか。

 

エネルギー面では、2016年10月、生活クラブと提携生産者の共同出資等で設立された「庄内・遊佐太陽光発電所」があります。これは、地域で使う電気を自然エネルギーで賄い、さらにその剰余で地域共同体の農業、福祉、環境を守る活動を支援する活動です。

今回のプログラムでは発電所を見学することはできませんでしたが、鳥海山をバックに広がる壮大なソーラーパネルが広がる様は圧巻だそうです。その大きさからFECネットワークの取り組みへの想いの強さを感じます。

 

住民の安心のために〜福祉の取り組み

 

 

地域で新たに暮らすことを考える場合、病気や介護が必要になった時にどうするのか=福祉も大きなポイント。

病気の心配を支える上で代表的なのが、酒田市が住民の不安解消のために取り組んだとして胸を張る「日本海総合病院」。ネーミングからしてスケールの大きさを感じさせるこの病院は、高度医療を担う地域の拠点病院です。

医療従事者のとりあいが懸念されるこの先、地域医療の充実のためには改革が不可欠と考え、県立病院と市立病院を統合し地方独立行政法人として再編成。旧県立病院を急性期の患者を診る総合病院に、市立病院を慢性患者のための病院へ役割分担のネットワークを確立しました。

「白い巨塔」ではありませんが、病院の再編成にはかなりの困難があったと想像できます。それでも困難を突破できたのは、関係者が地域住民の安心のためにという大きな目標で一致できたからなのでしょう。そんなところにも酒田市の柔軟さと力強さを感じるのは、私が酒田びいきになっている証拠かも?! ウェブサイトの口コミに「日本海総合病院が近くにあるのが元気の元です」とあったのも頷けます。

 

また、介護の分野でも先進的な取り組みが実施されています。

今回オプションで見学させてもらった「未来創造館」は元気な高齢者の受け入れ先であると同時に、介護士、看護師も配置され、介護や医療的処置が必要になった場合の対応も十分考えられていました。窓の外には鳥海山や出羽山地の山々、麓の田園が広がり、屋上に登れば反対側の街中の景色も楽しめ、都会が恋しい人にも安心できる眺望が魅力的です。 見学したモデルルームはおしゃれなマンション。まるでエステで施術を受けている状態で(受けたことはないけれど・・・)入浴できるミストの入浴施設など最新の介護機器も導入されていました。

さらに驚いたのは、スタッフが研修でオランダへ行き、安楽死についても学んできたということ。余命数日と思われる患者さんが病院で絶飲食をしなければいけないのは本人や家族にとって幸せなことなのだろうか? 最期に家族と一緒に食事をとって見送る「自然死」の事例を伺い、長寿時代の死について改めて考えさせられました。

 

誰もが自分らしく生きる ごちゃまぜのまちづくり

 

 

最終日、参加者と地域の人の交流会で紹介された山脇あやこさん。5年前に夫の転勤をきっかけに酒田市に移住し、現在は移住者交流会の副会長として移住者向けのイベントで自らの体験を発信するなど積極的に活動しています。

それ以外にも趣味のパン作りや麹づくりに加え、東京在住の時から続けているバンド活動を新たに酒田の仲間とも始め、今はすっかり酒田暮らしを満喫しているそうです。「都会では煩わしいと感じていたご近所との付き合いも、こちらでは新鮮で楽しい」と仰っていました。

 

平田牧場さんの美味しいお肉料理をいただきながら、同じテーブルになった地元の方とおしゃべりでは、酒田のマスコット「あののん&もしぇのん」のネーミングが酒田言葉の語尾からきていることも教えていただきました。帰ってからも生活クラブの配達で届いた平牧の豚肉をみては酒田言葉の響きを思い出しています。

 

「北前船の歴史をくむ酒田は、様々な地域の人や文化を受け入れてきた。そんな歴史的風土が、外からの移住者を温かく迎え入れるウェルカムの姿勢につながっているのではないでしょうか?」市役所の方の言葉は、今回のプロジェクトで出会ったすべての人に通じていると心から思いました。

 

酒田にある自然、人、大学などの資源に新たな住民が加わって、足し算ではなく掛け算で街をつくる。

そのための「新しい拠点」の候補地を最終日に見学してきました。ドラマ「おしん」でも有名になった観光資源でもある山居倉庫の向かい側。市街地にあるその場所に、買い物や市民の交流の場、新しく移住した人の住まいなどの機能を含ませる計画とのこと。

様々な素材をごちゃまぜにすることで新たなパワーを生み出す。酒田のまちづくりは、誰もが自分らしく生きることができる選択肢がいっぱいでした。

 

(※本稿は2019年8月上旬に実施された取材をもとに作成されました。)

 


 

 

取材者プロフィール

 

 

ペンネーム:あんパンダ
所属単協名:千葉・ベイ
プロフィール:男女雇用均等法施行一年前に学生生活を終え(中略)二人の息子も成人し、地域で子育て応援活動などをしています。

未来の子どもたちの幸せのためにできること模索中。