第4回「庄内コミュニティ構想」報告集会開催『最先端な山形暮らしと庄内FECの社会的意義』

生活クラブは住む慣れた地域と産地のコミュニティづくりに取り組んでいます。その活動の一環として2016年から山形県酒田市と提携し、人生を豊かに暮らす新しいモデルづくりの「庄内の福祉コミュニティ構想」を展開しています。その第4回の報告集会が2月1日に東京・新宿で開かれました。3人の講師が登壇し、「庄内コミュニティ構想」の意義や今後について話しました。

 


目次

第1講演

基調講演「最先端な山形暮らしと庄内FECの社会的意義」

 

三浦秀一氏(東北芸術工科大学 建築・環境デザイン学科教授)

 
 
三浦秀一氏(東北芸術工科大学 建築・環境デザイン学科教授)が基調講演を行ないました。2015年から生活クラブでは生活に欠かせない「食(Food)」「エネルギー(Energy)」「福祉(Care)」のしくみを自分たちでつくりだす社会をめざすFEC自給ネットワーク構想に取り組んでいます。その一環として2019年2月、生活クラブグループ各団体とその提携生産者等で、発電量年間約18MW(焼く5700世帯分の供給量)の「庄内・遊佐太陽光発電所」が山形県遊佐町に建設しました。庄内の地域資源である自然エネルギーで発電した電力を供給し、収益を持続可能な地域社会づくりに活用することが目的です。
 

 

山形でエネルギー問題を考える

日本のエネルギー自給率は食料自給率よりはるかに低い9.5%で、海外から輸入される石油・石炭・天然ガス(LNG)などの化石燃料に大きく依存しています。三浦さんは1990年代の半ばに東京から山形市に居を移し、山、里山を含めた地域で自然エネルギーを活用した暮らしに注目してきました。そして、三浦さんは高断熱住宅で、エネルギー自給生活のできる自宅を設計しました。壁の断熱材は20cm、屋根は40cmあり、窓は三重ガラス窓で、薪ストーブを使い、エアコン1台でも夏涼しく冬暖かい居住空間となっています。全エネルギーの需要量に対して太陽光発電、薪、太陽熱の再生可能エネルギーを利用量は101%で、エネルギー収支的にはほぼゼロエネルギーの住宅となっています。

日本の山の木は、かつては薪や炭などの木質燃料として利用してきました。バイオマスエネルギーは燃やすと二酸化炭素(CO2)が排出し、そのCO2は植物の光合成によって再び植物体内に固定化されるため、エネルギー資源としての循環型利用が可能です。バイオマスは自然の循環系の中でCO2を増加させない「カーボンニュートラル」です。さらに、エネルギーの備蓄面からも太陽光発電の蓄電池に比べ、備蓄型の熱エネルギーとしての威力は大です。

 

 

気候変動と地域づくり

地球温暖化防止のために温室効果ガスの排出量をゼロまたはマイナスにしていくために再生可能エネルギーへの転換が求められています。一方、再生可能エネルギーの環境への影響も懸念され、発電用地には地域住民の意向が入った都市計画が必要です。

日本で自然エネルギー100%のために必要な太陽光発電の用地面積の試算が右図で、山形県では160㎡の用地面積でまかなえます。また、東北電力管内で考えると、太陽光の発電量が落ちる11月~2月は風力の発電量があがる傾向です。ですから、その他の自然エネルギーとの組み合わせを考えていくことも必要です。さらに、019年4月に再生可能エネルギー海域利用法が施行され、洋上風力発電が日本においても本格的な普及が見込まれています。

山形県のエネルギー支出は輸入にたよる化石燃料などで年間3040億円です。農業販売額2400億円をはるかに上回っています。地元で自然エネルギーを生かしていこう、東根市のソーラーシュアリング営農型太陽光発電、耕作放棄地でソーラーシュアリング、鶴岡市三瀬地の「木質バイオマスエネルギーで自給自足活動」など様ざまな取組みも進んでいます。

集会参加者は「身近な持続再生エネルギー、樹木と風を、地球の中埋め込む視点の大切さを学びました」「、エネルギー問題が地域おこし、地域経済につながることがよくわかりました。断熱で暖房はちょっとびっくりでしたが、なるほどと思いました」「エネルギーのお話は、知らないことが多かったです。庄内に訪れた際は、食だけでもエネルギーの取り組みに触れてみたい」などの感想がありました。
 
 

 


 

第2講演

好きを小さな仕事に「庄内で小さな起業!ナリワイという生き方・働き方

 

井東敬子さん(鶴岡ナリワイプロジェクト代表 わたしごとJAPAN共同代表)

 

続いて、2011年に子育てを田舎でという思で、東京から山形県鶴岡市に移住した井東敬子さん(鶴岡ナリワイプロジェクト代表 わたしごとJAPAN共同代表)の講演でした。
「ナリワイ起業」とは、自分の好きなことと自分や友人のささいな困りごとを掛け算して月3万円くらいの利益をあげる仕事をするソーシャルビジネスです。仕事で小さな社会課題を解決しています。2015年から始めた起業講座で仲間を増やし、2019年には全国ネットワークの全国ネットワークを設立しています。

ナリワイの起業例には、「きれいな切り絵が好評で、障がい者の仕事づくりにもつながる」「近所の人から世話を頼まれた庄内柿:柿の葉茶、干し柿を使ったエナジーバーの製造販売」「野の草などを活用したフラワーアレンジメント」「病院の中でする塗り絵(病人にできるものを考案)でホスピタルアート」などがあります。

ナリワイプロジェクトから鶴岡市にコワーキングスペースなどの拠点も4つできました。

 

仕事を始めるのに、大切な3つのこと

世の中は困りごとだらけなので、「どうやったら売れるではなく、どうやったら役にたてるか」に発想を変え、小さな困りごとと好きなことをかけ合わることです。
次に、得意な人と組んで、商売のさまざまな工程をシェアします。すろと、仕事で得られるものが「競争する」から、「楽しい」「自分が成長する」「仲間とつながる」などに変わってくるのです。さらに、「正しいことより、ワクワクすることから始める」です。これからの人生モデルは自分の手で作っていくことです。酒田で取り組んでいる「参加する暮らし」でも、移住された人と酒田の人が一緒になって新しい仕事が始まることが期待されます。
 

 
参加者からは「人は人と語り合えば、「仕事」がうまれる時代。「就学を勝ちぬく」時代を終わりにする方向性を教えていただきました」「今後の働き方や活動を考えてみようと思いました」「小さな幸せを感じ合える地域をつくる(コミュニティ)ことがどこにいても大切だなと思いました」「井東さんの話を聞いていると自分にも何か出来そうなきがする」など、活力の湧く講演となりました。
 

 


 

第3講演

庄内福祉コミュニティ構想における「酒田市の取組み」

 

大沼康浩氏(酒田市地域創生部長)

 
大沼康浩氏(酒田市地域創生部長)は講演の中で、酒田市と生活クラブのこれまでの提携の経過と今後の取り組みについて話しました。

 

酒田市の紹介と生活クラブ

 
酒田市は山形県の日本海側の庄内平野に位置し、美しい自然とおいしい食を誇り、文化・歴史の町でもあります。さらに災害が少なく、住みやすい気候でもあります。人口は101,331人(2019年12月末)で、他の地方都市と同じように人口減が進んでいます。
 
酒田市を含む庄内地方は、生活クラブ生協の消費材の主要な生産地の一つです。45年に及ぶ提携の歴史があり、延1万人を超える組合員が庄内、酒田を訪れて、生産者との産地交流を行なってきています。さらに、生活クラブ生協は、2015年に策定された第6次連合事業中期計画中で、FEC自給ネットワーク構想を主要な提携産地に産地協議会の設置を提案しています。一方、酒田市は平成27年に「酒田市まち・ひと・しごと創生総合戦略」を策定し、「酒田への新しい人の流れをつくる」を掲げ、若者の定住促進、移住・定住に向けた総合的対策の推進、元気な高齢者の移住促進を進めています。酒田市のまちづくりに生きがいを感じてくれる人材を迎え入れ、関係人口と言われる深く関わる応援団を増やしていくことを目指しています。生活クラブの組合員の方々がまちづくりや地域福祉で積極的に活動しているエネルギーや経験を酒田市でも活かしてもらいたいと考え、業務提携を進めてきました。
 
暮らし方の提案と酒田からの情報発信として、「老い支度を考える―ゆるやかな連絡会」や「報告集会」などに延べ1000人を超える参加がありました。また、お試し住宅利用や生活クラブ組合員の体感プログラム、WEB取材などで多くの組合員が酒田市を訪れています

 

これからの新しい拠点づくりに

 
2019年12月事業者説明会を実施し、酒田市の構想の考え方、基本計画と拠点の基本的考え方や生活クラブとの連携の経過を説明しました(7団体参加)。2020年1月に対話型市場調査(4団体参加)では、より実現可能な取組みとするため関心・意欲のある事業者と個別に対応しました。今後パートナーを選定し、事業化が動き出します。
 
機能の基本的な考え方は、拠点に併設される移住者が移り住む住まいは、参加意欲の高い、多世代や多様なライフスタイルの入居者によって、新しい移住コミュニティが形成されながらも、拠点を通じて地域にスムーズに溶け込んで行く仕組みが必要となります。そのため、拠点では、人が集う仕掛けとして、例えば「交流」「食」「健康」「学び」といったコンセプトの機能が備わることを想定しています。

 

 

 

皆さんの参加を酒田市でお待ちしています。

 

 

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